ヴィット代数

曖昧さ回避 二次形式のヴィット環(英語版)ヴィットベクトル(英語版)の環とは異なります。

数学において、複素ヴィット環(ヴィット-かん、: Witt algebra; ヴィット代数)とは、二定点を除くリーマン球面の全域で正則な有理型ベクトル場全体の成すリー環である。名称はエルンスト・ヴィットに因む。このリー環は円周上の多項式ベクトル場全体の成すリー環の複素化でもあり、環 C[z, z−1] の微分(あるいは導分(英語版))全体の成すリー環でもある。ヴィット環は共形場理論の研究において現れる。

有限体上で定義されるいくつかの同様なリー環もやはりヴィット環と呼ばれる。

複素ヴィット環はエリ・カルタンによって初めて定義され(Cartan 1909)、その有限体上の類似物はヴィットによって1930年代に研究された。

基底

ヴィット環を円周上のベクトル場のリー環として考えたとき、その基底は整数 n に対して

L n = z n + 1 z {\displaystyle L_{n}=-z^{n+1}{\frac {\partial }{\partial z}}}

によって与えられる。

2つのベクトル場の括弧積は、基底における積

[ L m , L n ] = ( m n ) L m + n {\displaystyle [L_{m},L_{n}]=(m-n)L_{m+n}}

を線型に拡張したもので与えられる。ヴィット環はヴィラソロ代数と呼ばれる中心拡大を持つ。ヴィラソロ代数は共形場理論や弦理論において重要である。

有限体上のヴィット環

標数 p > 0 の体 k 上のヴィット環は環

k [ z ] / ( z p ) {\displaystyle k[z]/(z^{p})}

上の微分全体の成すリー環として定義される。ヴィット環は Lm (−1 ≤ mp − 2) によって張られる。

参考文献

  • E. Cartan, Les groupes de transformations continus, infinis, simples. Ann. Sci. Ecole Norm. Sup. 26, 93-161 (1909).
  • Hazewinkel, Michiel, ed. (2001), “Witt algebra”, Encyclopedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4, https://www.encyclopediaofmath.org/index.php?title=Witt_algebra