マクスウェル・ベティの相反作用の定理

マクスウェル・ベティの相互作用の定理(マクスウェル・ベティのそうごさようのていり、英語: Maxwell-Betti reciprocal work theorem)とは、構造力学における弾性体の定理である。1872年エンリコ・ベッチによって発見された[1]。弾性体上に2種類の荷重群 { P i | i = 1 , 2 , } , { P k | k = 1 , 2 , } {\displaystyle \{P_{i}|i=1,2,\dots \},\{P'_{k}|k=1,2,\dots \}} をかけることを考える。一つ目の荷重群 { P i } {\displaystyle \{P_{i}\}} のみをかけたときにもう一方の荷重群 { P k } {\displaystyle \{P'_{k}\}} の作用点の作用方向変位成分を { u k } {\displaystyle \{u_{k}\}} とする。また、荷重群 { P k } {\displaystyle \{P'_{k}\}} のみをかけたときの { P i } {\displaystyle \{P_{i}\}} の作用点の作用方向変位成分を { u i } {\displaystyle \{u'_{i}\}} とする。このときベティの相反定理

i P i u i = k P k u k {\displaystyle \sum _{i}P_{i}u'_{i}=\sum _{k}P'_{k}u_{k}}

が成り立つ[2]

特にi = k = 1, P1 = P '1 = 1とすると、マクスウェルの相反定理

任意の点Aに作用する単位荷重PAによって他の点Bに生じる変位(の、別に点Bに作用される単位荷重PBの方向への成分)u'Aは、PBによる点AのPAの方向への変位量(の、PAの方向への成分)uBに等しい。すなわち
u A = u B {\displaystyle u'_{A}=u_{B}}

が成り立つ。

証明

簡単な証明としてi = k = 1とし、弾性体に力PAPBの2つの荷重を作用させる。ただし作用させる手順は次の2通りを考える。

  • PAを作用させた後、PBを作用させる。このとき、
    1. PAを作用させた際の点Aの変位をuAAとすると、外力仕事は(1/2)PA uAA
    2. その後PBを作用させた際の点A, Bの変位をそれぞれuAB, uBBとすると、外力仕事は(1/2)PB uBB + PA uAB
  • PBを作用させた後、PAを作用させる。このとき、
    1. PBを作用させた際の点Bの変位をuBBとすると、外力仕事は(1/2)PB uBB
    2. その後PAを作用させた際の点A, Bの変位をそれぞれuAA, uBAとすると、外力仕事は(1/2)PA uAA + PB uBA

弾性体に蓄えられるひずみエネルギーは経路によらないため、それぞれの手順による外力仕事の和は同じでなければならない。したがって

( 1 2 P A u A A ) + ( 1 2 P B u B B + P A u A B ) = ( 1 2 P B u B B ) + ( 1 2 P A u A A + P B u B A ) P A u A B = P B u B A {\displaystyle {\begin{aligned}\left({\frac {1}{2}}P_{A}u_{AA}\right)+\left({\frac {1}{2}}P_{B}u_{BB}+P_{A}u_{AB}\right)&=\left({\frac {1}{2}}P_{B}u_{BB}\right)+\left({\frac {1}{2}}P_{A}u_{AA}+P_{B}u_{BA}\right)\\\therefore P_{A}u_{AB}&=P_{B}u_{BA}\\\end{aligned}}}

が成り立つ。

  1. ^ なお、名前のもうひとつのほうの「マクスウェル」は、電磁方程式などでも有名なジェームズ・クラーク・マクスウェルに由来する。
  2. ^ 石田修三、松永裕之、中村恒善、須賀好富、永井興史郎『建築構造力学 図説・演習II』丸善、162-164頁。ISBN 978-4621039663。 

関連項目