ジルチアゼム

ジルチアゼム
IUPAC命名法による物質名
  • cis-(+)-[2-(2-ジメチルアミノエチル)-5-(4-メトキシフェニル)-3-オキソ-6-チア-2-アザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7,9,11-トリエン-4-イル]エタン酸
臨床データ
胎児危険度分類
投与経路 経口
薬物動態データ
生物学的利用能40%
代謝肝臓
半減期3-4.5 時間
排泄腎臓
胆汁
母乳 (授乳期の女性)
識別
CAS番号
42399-41-7
ATCコード C08DB01 (WHO)
PubChem CID: 39186
DrugBank APRD00473
ChemSpider 35850 チェック
UNII EE92BBP03H チェック
KEGG D07845  チェック
ChEMBL CHEMBL23 チェック
化学的データ
化学式C22H26N2O4S
分子量414.519 g/mol
  • O=C2N(c3c(S[C@@H](c1ccc(OC)cc1)[C@H]2OC(=O)C)cccc3)CCN(C)C
  • InChI=1S/C22H26N2O4S/c1-15(25)28-20-21(16-9-11-17(27-4)12-10-16)29-19-8-6-5-7-18(19)24(22(20)26)14-13-23(2)3/h5-12,20-21H,13-14H2,1-4H3/t20-,21+/m1/s1 チェック
  • Key:HSUGRBWQSSZJOP-RTWAWAEBSA-N チェック
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ジルチアゼム塩酸塩: diltiazem hydrochloride)は、血管拡張薬の1つである。ジルチアゼムは、Ca2+チャネルの開口を抑制することにより血管平滑筋細胞へのカルシウムイオンの流入を抑制し、血管を拡張させる。血管拡張作用(血管選択制)は冠動脈>末梢血管であり、日本では1974年に狭心症治療薬として開発されヘルベッサーの商品名で発売された。その後1982年に高血圧の適応を取得している[1]。田辺製薬(現:田辺三菱製薬)により合成・開発された。

性質と合成

合成時の原料の1つとしてアニスアルデヒドを用いている[2]

構造上はベンゾチアゼピン誘導体であり、ジヒドロピリジン誘導体のニフェジピンアムロジピンやフェニルアルキルアミン誘導体のベラパミルと基本骨格が異なるが、電位依存性L型カルシウムチャネルのα1サブユニットに結合し、カルシウムチャネルの開口を抑制するは同じである[3]

血管拡張(冠動脈、末梢動脈)とともに心刺激生成・伝導系の抑制作用を有する。刺激伝導抑制/血管拡張の比は、フェニルアルキルアミン誘導体>ベンゾチアゼピン誘導体>ジヒドロピリジン誘導体の順である[4]

薬理作用

  • 血管拡張作用:血管平滑筋へのカルシウム流入抑制による血管拡張作用。
※血管平滑筋の収縮は、細胞外から血管平滑筋細胞へのカルシウムイオンの流入により起こる。
Ca拮抗薬は血管平滑筋細胞へのCaイオンの流入を抑制することで、血管平滑筋の収縮を抑制し動脈(血管平滑筋は主に動脈に存在する)を拡張する。
  • 抗狭心症作用:冠動脈拡張作用、冠スパズム抑制作用。および、心拍数の低下作用に伴う心筋酸素消費量の抑制作用。
  • 心拍数低下作用:心臓の刺激生成・伝導系(洞結節や房室結節)でのカルシウム流入抑制。主に洞結節での心拍数の生成抑制作用。
  • 抗不整脈作用:ワソラン(ベラパミル)同様に、心臓の刺激生成・伝導系(洞結節や房室結節)でのカルシウム流入抑制による洞結節での刺激生成低下、房室結節でのリエントリーの抑制作用。

PSVTの頻脈停止作用は、房室結節でのリエントリー抑制による作用。 Af患者の頻脈停止は、房室結節での伝道遅延作用によるもの。 洞性頻脈停止は、洞結節での刺激生成抑制によるもの。

臨床適応

抗狭心症薬抗不整脈薬降圧薬として使用される。

  • 降圧作用:末梢血管の拡張による。
  • 抗狭心症作用:冠動脈拡張作用、特に冠スパズム(冠攣縮)の防止効果に優れることから安静・異型狭心症などの発作予防に使用される。また、心拍数の低下作用を有し、心筋酸素消費量を抑制することから労作狭心症にも適応となる。
  • 抗不整脈作用:心臓の刺激生成・伝導系(洞結節や房室結節)での膜電位生成に関与するカルシウム流入を抑制し心拍数の低下作用が認められる。また房室結節でのカルシウム拮抗作用により発作性上室性頻脈 (PSVT) など房室結節のリエントリー性の不整脈などに対しても使用される。

海外展開

日本国内で開発され海外展開されたパイオニア的な薬剤である。

出典

  1. ^ 阿部久二、長尾拓ら 『塩酸ジルチアゼムの開発研究』 薬学雑誌 108(8) 716 (1988)
  2. ^ アニスアルデヒド ファインケミカル 2009年11月号 (Chemical Profile) p.81
  3. ^ 柳澤輝行:[目でみる循環器病シリーズ13]『循環器病の薬物療法』 Ca拮抗薬の分類と作用機序 pp132-143 メジカルビュー社、1998年 ISBN 4-89553-744-7 C3347
  4. ^ 中村元臣、平 則夫偏  『カルシウム拮抗薬‐基礎と臨床‐全面改訂』1986年 医薬ジャーナル社

参考文献

  • 伊藤勝昭ほか編集 『新獣医薬理学 第二版』 近代出版 2004年 ISBN 4874021018

関連項目

 
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